欧米諸国がすでにウクライナに供与済みのミサイルを使ったロシア領内深部への攻撃に対する制限の解除がいま、話題になっている。
問題となっているのは、ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)、イギリスの空中発射巡航ミサイル(ストームシャドウ)、フランスの空中発射型ステルス長距離兵器(スカルプ)といったミサイルである。
ATACMS(「アタック・エムズ」と発音)は、アメリカ製の長距離ミサイルで、375ポンド(約170キログラム)の爆薬が充填されており、モデルによっては190マイル(約306キロメートル)先の標的まで攻撃することができる。
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■深部攻撃は効果なし
しかし、こうした深部攻撃の効果については否定的な意見が多い。コロンビア大学のスティーブン・ビドル教授は『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿で、「ゲームを変えるほどの効果を得るには、ウクライナはこれらの攻撃を、これまでこの戦争で自国の軍が習得できなかった規模の、綿密に調整された地上作戦と組み合わせる必要がある」としたうえで、「そうでなければ、ウクライナが追加のディープストライク能力から引き出せる利益は、おそらく戦況を覆すには十分ではないだろう」と指摘している。
もちろん、ウクライナ軍の一時的な士気高揚をもたらす可能性は高い。しかし、その高揚は長くつづきそうもない。すでに、9月8日付の「The Economist」は、「ウクライナの前線が弱体化するドンバスの危険ーロシア軍戦闘員が防衛隊を包囲しようとしている」という記事を配信している。つまり、ドンバスの苦戦が明るみに出れば、深部攻撃の最初だけの成果などすぐに忘れ去れてしまうだろう。
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■懸念される強硬派の発言
このプーチンの発言は、まだ生易しいものかもしれない。強硬派の代表格、政治学者セルゲイ・カラガノフのインタビューが9月12日付のロシアの有力紙「コメルサント」の1面に掲載されている。つぎの発言は勇ましい。
「我が国の領土に対するいかなる大規模な攻撃に対しても、核攻撃で対応する権利を有することを宣言する時である。これは、我が国の領土を占領された場合にも当てはまる。同時に(ドクトリンに)『核のエスカレーション』という概念を導入し、そのような措置の前に、(核兵器を使用する)準備が整っていることを条件付きまたは現実の敵に確信させるような措置を講じる必要がある」
「そして今、米国が率いる核武装したNATOは、ウクライナの大砲の餌を使って、我々に対して全面戦争を仕掛けている。間もなく、この狂気を止めなければ、彼らは他の国々にも餌(えさ)を与えはじめるだろう」
ただし、ロシアの公式見解は、強硬派のカラガノフの見解とは大きく異なっている。5月16日付でプーチンと中国の習近平国家主席が発表した共同声明には、「両締約国は、2022年1月3日の『核戦争の予防と軍拡競争の回避に関する核保有5カ国首脳の共同声明』へのコミットメントを再確認し、とりわけ、核戦争に勝者は存在せず、核戦争は決して行われるべきではないという前提を再確認し、この文書のすべての締約国に対し、その規定に実際に従うよう改めて要請する」と書かれている。
中国は同年7月、ロシアと他の核保有国に対し、核兵器の先制使用の放棄を再び提案したし、9月には、中国外務省は、「核兵器は使用されるべきではなく、核戦争は行われるべきではない」とのべている。つまり、対中関係を重視すると、そう簡単に核兵器使用はできない。だが、ロシア国内の強硬派は怒り狂っている。
紹介したインタビューのなかで、カラガノフは「核ドクトリンを強化することが必要なだけでなく、ロシア指導部が(核兵器を)使用する用意があると明確に表明することが重要だ」とのべた後、「だれに使うのか?」と尋ねられ、「NATOのウクライナ侵略を支持する国々だ」と明言している。さらに、つぎのように話した。
「エスカレーションの理論によれば、核攻撃までにはあと10~15段階ほど進む必要があり、今のところ5段階しか進んでいない。しかし次は、キエフ政権への供給で重要な役割を果たしているNATO諸国の施設を攻撃する必要があるのは明らかだ。それでも阻止できなければ、次に進む。」
おそらくロシアへの深部攻撃はこうした強硬派を勢いづけ、プーチンが核兵器を使用する時期を近づけることになるだろう。
9/18(水) 6:04配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/58a462aef59ab3999f3181f4d844c121d98db583
引用元: ・【ゲンダイ】危ないぞ! ロシアの核攻撃いよいよ近し…火に油を注ぐウクライナへの長距離ミサイル供与 [樽悶★]
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